SaaS型ERPとは?基礎知識や導入メリット・選び方を徹底解説!

企業の業務効率化のために、ERPシステムの導入を検討する経営者や担当者は多くいます。従来のERPは高額な初期投資がかかるうえ、導入までに時間が必要です。この記事では、SaaS型ERPの仕組みやメリット・デメリット、選び方のポイントを詳しく解説します。

記事を読むことで、SaaS型ERPの導入方法を詳しく理解し、業務効率化を実現するための手順が分かります。導入の際は、使用目的に合わせたサービスを提供しているERPを選ぶ必要があります。カスタマイズ性が低いなどのデメリットもあるため、自社に適しているか慎重に検討しましょう。

SaaS型ERPの基礎知識

SaaS型ERPを導入する前に、基礎知識の理解が必要です。以下2点について解説します。

  • SaaS型ERPの仕組み
  • SaaSとクラウドの違い

SaaS型ERPの仕組み

SaaS型ERPは、インターネットを通じて企業の経営資源を統合的に管理するクラウドサービスです。サーバーやデータの管理はプロバイダーが行います。データはクラウド上で保存や処理が可能です。WebブラウザからERPシステムにログインして使用する仕組みで、月額や年額の利用料金制を採用しています。

自動アップデートにより常に最新版を使用できる点や、マルチテナント方式でリソースを共有する仕組みが特徴です。リモートからアクセスできるので、必要に応じて拡張できる柔軟性も備えています。セキュリティ面では、プロバイダーが対策を講じるため、利用者側の負担は軽減されます。

インターネット接続が必要なので、オフラインでは使用できません。SaaS型ERPは、手軽に導入できるだけでなく、企業のニーズに応じて柔軟に利用できる便利なシステムです。企業規模や業種を問わず、業務管理の効率化が可能です。
» ERPとは?導入のメリットから選び方までわかりやすく解説!

※マルチテナント方式とは複数のユーザーが同じシステムやサービスを共有して利用する方式を指します。

SaaSとクラウドの違い

SaaSとクラウドの違いは、提供されるサービスの範囲にあります。

クラウド
インターネット上のリソースを利用する環境全般を指します。インフラストラクチャーやプラットフォームもクラウドの一部で、利用者の管理が必要な点が特徴です。ストレージやコンピューティングリソースも提供し、従量制の料金体系も多く見られます。
SaaS
クラウドの一形態であり、ソフトウェアをインターネット経由で提供しています。アプリでサービス提供を行っており、利用者側での管理は不要です。料金体系は定額制が一般的です。

違いを理解することで、自社のニーズに最適なサービスを選べるようになり、ビジネスを効率化できます。
» クラウドERPの概要と具体的な選び方

SaaS型ERPのメリット

SaaS型ERPのメリットを紹介します。メリットは以下のとおりです。

  • 初期投資額を抑えられる
  • 短期間で導入できる
  • 常に最新のバージョンを利用できる
  • セキュリティが堅い
  • 信頼性がある

初期投資額を抑えられる

SaaS型ERPの魅力は、従来のERPシステムと比べて、導入時のコストを大幅に削減できる点です。SaaS型ERPを利用すると、以下のコスト削減効果があります。

  • サーバー・ハードウェア購入コスト
  • 月額のライセンスコスト
  • 保守・運用コスト
  • 導入時の設定コスト
  • IT人材確保にかかるコスト
  • 電気代や設置スペースのコスト
  • バックアップシステムの構築コスト

拡張性に応じて利用料が調整できるので、事業規模の変化に合わせたコスト管理が可能です。アップグレードや機能追加の費用が含まれているため、長期的なコストを予測しやすく、計画的な運用が可能です。

無料トライアルを提供しているサービスなら、初期費用をかけずに機能面を実際に試して確認できます。実際に使ってみてから本格導入を決められるため、無駄な投資の回避に有効です。

短期間で導入できる

SaaS型ERPは短期間で導入できるので、企業の業務効率化をスムーズにします。以下の特徴により、スピーディーな導入が可能です。

  • 既存のインフラを使用
  • サーバー・ソフトウェアのセットアップが不要
  • ブラウザベースで即時利用可能
  • 段階的な導入が可能
  • ベンダーによる導入支援サービスが利用可能
  • データ移行ツールやテンプレートが利用可能

SaaS型ERPはクラウド環境を利用しており、リモートで導入できます。場所や時間の制約を受けずに導入を進められる点が特徴です。従業員のトレーニング期間も短縮できるため、会社全体での導入もスムーズに行えます。
» ERPの導入ステップ|最適な選択で経営効率アップを実現!

常に最新のバージョンを利用できる

SaaS型ERPのメリットは、常に最新のバージョンを利用できる点です。ソフトウェアの自動アップデート機能により、新しい機能や改善点がすぐに反映されます。最新バージョンで得られるメリットは以下のとおりです。

  • 最新の機能を即座に利用できる
  • セキュリティパッチが自動適用される
  • バージョンアップの手間や費用がかからない
  • 全ユーザーが同じバージョンを使える

古いバージョンの互換性問題も回避し、スムーズな業務運営が可能です。法改正などの外部要因にも迅速に対応できます。常に最新のバージョンを利用すれば、ビジネス環境の変化に柔軟に対応できます。

セキュリティが堅い

SaaS型ERPのセキュリティは、高度な対策を実施しているため安全です。SaaS型ERPのセキュリティ対策は以下のとおりです。

  • データ暗号化技術
  • 多要素認証
  • 定期的なセキュリティ監査
  • アクセス制御と権限管理
  • データのバックアップと災害復旧計画

SaaS型ERPのセキュリティ対策は、企業の大切なデータを保護するために設計されています。しかし、利用企業側でも適切な対策を講じることが重要です。24時間365日のセキュリティ監視により、トラブル発生時にも迅速に対応できます。

SaaS型ERPのセキュリティは、コンプライアンス基準に準拠しているため、法律や規制面でも安心です。データセンターの物理的セキュリティやネットワークセキュリティが強化されており、不正アクセスのリスクも軽減されています。

信頼性がある

SaaS型ERPは99.9%以上の高い稼働率を指標としているケースが多く、業務を安定的に運用できる仕組みが整っています。信頼性の高いデータセンターで管理されているため、システム障害のリスクが少なく安定した運用が可能です。SaaS型ERPのセキュリティ対策は以下のようになります。

  • 定期的なバックアップ
  • 24時間365日の監視体制
  • 冗長化されたシステム構成
  • 最新のセキュリティ対策
  • 定期的なバックアップ
  • システム構成による単一障害点の排除
  • プロバイダーによる最新のセキュリティ対策
  • SLAにもとづいたサービス提供
  • 大規模な災害時にもデータの復旧が可能
  • 定期的なセキュリティ監査
  • 多層的なデータ保護メカニズム

SaaS型ERPは高い信頼性と安全性を備えているため、安心して業務に活用できます。

SaaS型ERPのデメリット

SaaS型ERPを導入する前に、以下のデメリットを理解しましょう。

  • カスタマイズ性が低い
  • オフラインで利用できない

カスタマイズ性が低い

SaaS型ERPのカスタマイズ性の低さは、デメリットの1つです。標準機能のみで運用する必要があるため、企業独自の業務プロセスに合わせた細かい調整は難しくなります。独自の帳票や画面の作成、他システムとの連携が制限される場合があります。業界特有の要件に対応できない点を考慮しなければなりません。

SaaS型ERPは、企業の特殊な業務フローや独自のビジネスモデルに適合しにくくなります。標準機能で対応できない部分は、業務プロセスの見直しや運用方法の工夫が必要です。
» ERPカスタマイズの基礎知識とメリット・デメリットを解説

オフラインで利用できない

SaaS型ERPはインターネット接続が必要であるため、オフライン環境では利用できません。通信障害やネットワーク不具合の際、システムへのアクセスは不可です。インターネットの速度が遅い環境では、動作が遅くなる可能性があります。

多くのSaaS型ERPプロバイダーが、オフラインモードや同期機能などを改善しています。利用を検討する際は、オフライン機能の有無や使いやすさも確認しましょう。インターネット接続の制限によるリスクを最小限に抑えられます。

SaaS型ERPの選び方

SaaS型ERPの選び方を紹介します。選ぶポイントは以下のとおりです。

  • 機能
  • 価格
  • サポート体制

機能

SaaS型ERPには、企業の業務を効率化する機能が備わっています。機能を活用すると、企業全体の生産性向上につながります。レポーティングやダッシュボード機能など、基本機能以外も確認しましょう。データを視覚化して分析できるため、経営判断に役立つ情報を素早く得られます。

外出先でも、スマートフォンやタブレットからシステムにアクセスできる、モバイル対応のSaaS型ERPが便利です。他のソフトウェアとのデータ連携ができると、より効率化が進むため、API連携機能が使えるサービスが理想的です。

多言語・多通貨への対応やワークフロー機能、ドキュメント管理機能など、機能の豊富さを確認しましょう。

※APIとはソフトウェアやプログラム、Webサービス間をつなぐインターフェースを指します。

価格

SaaS型ERPの価格は、サービスの内容や規模によって異なります。一般的に月額制と年額制に分けられます。以下の点を把握したうえで、料金が適しているかを考慮しましょう。

  • ユーザー数
  • 利用する機能の種類
  • データ容量
  • サポートのレベル
  • 初期費用

長期的に利用する場合は、総コストの計算が必要です。少しでも出費を抑えるために、無料トライアル期間が設けられているサービスを選びましょう。長期契約による割引や、機能ごとの料金プランがあるサービスがおすすめです。追加オプションの料金やサポート費用の有無も確認しましょう。

アップグレードやダウングレードの柔軟性、解約時の条件なども重要です。

サポート体制

SaaS型ERPを選ぶ際、サポート体制の質を確認してください。充実したサポートがあれば、システムの円滑な運用と問題解決が可能です。24時間365日のテクニカルサポートを提供しているサービスが理想的です。オンラインヘルプや電話、メールなど、さまざまな問い合わせ対応が可能なサービスを選びましょう。

リモートサポートを利用すれば、遠隔で問題解決が可能です。サポート体制が整っているSaaS型ERPを選ぶと、安心して利用できます。

SaaS型ERPを最大限に活用するコツ

SaaS型ERPを最大限に活用するコツを紹介します。以下の方法を参考にしてください。

  • 社員のトレーニングを行う
  • 継続的なモニタリングと改善を行う
  • セキュリティ対策を徹底する

社員のトレーニングを行う

SaaS型ERPを最大限活用するなら、社員のトレーニングは不可欠です。効果的なトレーニングを行うと、社員の業務効率が向上し、システムの導入効果を最大化できます。トレーニングは、以下の方法が効果的です。

  • 社員全員への使い方の教育
  • 部門ごとに特化した機能のトレーニングを実施
  • オンラインビデオやマニュアルを活用
  • 自己学習環境の整備
  • 定期的なフォローアップ研修
  • 新機能や更新に関する情報共有と再トレーニング
  • ヘルプデスクやサポート窓口の設置と周知
  • 社内でのベストプラクティス共有会を開催
  • トレーニングの効果を測定・評価
  • 個別のスキルアップ支援プログラムの提供

社員が疑問点をすぐに解決できる環境を整えると、スムーズな業務遂行が可能です。社員一人ひとりのスキルレベルに合わせたサポートにより、全体的な活用レベルが向上します。

継続的なモニタリングと改善を行う

SaaS型ERPを効果的に活用するには、継続的なモニタリングと改善が欠かせません。システムの利用状況を把握した上で運用しましょう。定期的な確認とフィードバックの分析で、問題点や改善点を早期発見できます。

新機能や更新の適用と評価を行うと、常に最新の機能を活用できます。業務プロセスの見直しと最適化も重要です。ERPシステムの導入後も、データの品質管理と定期的なクリーニング、システム運用コストの最適化を行いましょう。ベンダーとの定期的な情報交換なども行ってください。

セキュリティ対策を徹底する

セキュリティ対策を徹底すると、SaaS型ERPを安全に利用できます。以下の対策がおすすめです。

  • 強力なパスワードポリシーの設定
  • パスワードの定期的な変更
  • 多要素認証の導入
  • ファイアウォールやアンチウイルスソフトの導入
  • 定期的にセキュリティ教育を実施
  • データの暗号化
  • アクセス権限の管理
  • セキュリティアップデート
  • データのバックアップ
  • セキュリティ監査

適切なセキュリティ対策により、SaaS型ERPを安全に運用できます。常に最新の脅威に備えましょう。

まとめ

SaaS型ERPは、業務効率化やコスト削減を実現できる便利なシステムであり、企業の成長を支える重要なツールです。初期費用を抑えつつ短期間で導入できるメリットがある一方、カスタマイズ性が低いなどのデメリットもあります。

自社のニーズや目的を明確にし、適切なサービスを選ぶことが成功の鍵です。記事を参考に、SaaS型ERPの導入計画を立て、業務改善に役立ててください。