基盤システムと基幹システムの違いを解説!比較してわかる導入メリット

企業経営において、効率的な業務運営は不可欠です。ERP(※1)の導入を検討する際、基盤システムと基幹システムの違いがわからずに悩む方も多いです。この記事では、基盤システムと基幹システムの違いやメリット、導入・管理のポイントを解説します。

記事を読むと、自社に最適なシステムを選択し、効果的に導入・運用する方法が理解できます。基盤システムや基幹システムの導入には、自社のニーズの明確化が欠かせません。それぞれの特徴を理解し、費用対効果やセキュリティ面を考えて選択しましょう。
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※1 ERPとは、企業経営に必要な資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を適切に分配する考え方やシステムを指します。Enterprise Resource Planningの略です。

基盤システムと基幹システムの違い

基盤システムと基幹システムは、企業のIT環境で重要な役割を持ち、明確な違いがあります。基盤システムと基幹システムの違いについて解説します。
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構成

ERPシステムの構成は、大きく分けると基盤システムと基幹システムの2つです。それぞれのシステムは企業の業務を効率化し、経営を支援する重要な役割を果たします。

基盤システムはIT技術のインフラの部分を指し、以下で構成されています。

ハードウェア
サーバーやネットワーク機器です。
ソフトウェア
オペレーティングシステムやデータベース管理システムがあります。
セキュリティ対策
ファイアウォールや暗号化システムのことを指します。

基幹システムは、企業の主要な業務を管理するシステムです。基幹システムの対象は、以下の管理業務です。

  • 会計管理
  • 人事管理
  • 在庫管理
  • 生産管理
  • 販売管理

基盤システムと基幹システムの連携により、企業全体の業務効率が向上します。経営判断に必要な情報を、リアルタイムで確認することも可能です。
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目的

基盤システムと基幹システムは、それぞれ異なる目的を持っています。基盤システムの目的は、情報システム全体を支える安定したインフラを提供することです。主な役割は以下のとおりです。

  • サーバーやネットワークの安定稼働の確保
  • データベースの管理と保護
  • セキュリティ対策の実施
  • システム全体の可用性と信頼性の維持
  • 新技術導入のための基礎環境の整備

一方、基幹システムの目的は、企業の中核業務を支援し、業務の効率化を図ることにあります。主な役割は以下のとおりです。

  • 販売管理や在庫管理などの業務処理の自動化
  • 正確なデータ処理と管理
  • 部門ごとの業務最適化
  • 日次・月次などの定型業務の効率化
  • 業務データの収集と分析

基盤システムと基幹システムはそれぞれが異なる目的を持ちながら、相互に補完し合う関係にあると言えます。

導入時期

システムの導入時期は企業の状況や目的によって異なります。基盤システムの導入を検討するのは、以下を行うタイミングです。

  • 企業のIT基盤を整備するとき
  • 新規システムを導入するとき
  • 大規模なIT更新をするとき

基幹システムの導入を検討するのは以下の場合です。

  • 業務プロセスの標準化や効率化が必要になった場合
  • 企業の成長期や業務改革をする場合

システムの導入時期を決める際は、長期的な経営戦略にもとづいて判断しましょう。企業の現状と将来の目標を見据えた適切なタイミングでの導入で、最大の効果を得られます。基盤システムと基幹システムの同時導入が推奨される時期としては、以下のケースが考えられます。

  • 新規事業を立ち上げる場合
  • 業務効率化が急務となった場合
  • 既存システムの老朽化が進んだ場合

適切な導入時期の見極めにより、企業の成長や競争力の強化が可能です。導入には時間とコストがかかるので、慎重な検討が必要です。
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基盤システムを導入するメリット

基盤システムの導入には以下のメリットがあります。

  • セキュリティとリスク管理の強化
  • システムの安定性と稼働性の向上
  • ITインフラの最適化とコスト削減

セキュリティとリスク管理の強化

セキュリティとリスク管理の強化は、企業の情報資産を守り、安全な事業運営を実現するためには欠かせません。アクセス制御や認証システムを行うことで、不正アクセスやデータ漏洩のリスクを大幅に減らせます。

バックアップとデータ復旧システムの整備により、万が一の事態にも迅速な対応が可能です。セキュリティポリシーの策定と従業員教育を行うと、組織全体のセキュリティ意識が高まります。インシデント対応(※2)の計画の作成は、被害を最小限に抑えるために重要です。定期的なパッチ適用や、脆弱性の管理も欠かせません。

基盤システムの導入で多層的なセキュリティ管理ができ、堅牢な安全体制を構築可能です。コンプライアンス要件を満たしやすく、法的リスクの軽減にもつながります。

※2 インシデント対応とは、サイバーセキュリティ侵害に対する準備や取り組みです。

システムの安定性と稼働性の向上

基盤システムの導入でシステムの安定性と稼働性が向上し、ビジネスの継続性が確保され、生産性が向上します。システムの安定性と稼働性の向上により、期待できるメリットは以下のとおりです。

  • ダウンタイムの減少
  • 24時間365日の安定稼働
  • 障害発生時の迅速な対応と復旧
  • システムパフォーマンスの最適化

システムを安定稼働させると業務の中断を最小限に抑え、従業員の生産性を維持できます。システムの安定性が向上すると、顧客満足度の向上にもつながります。基盤システムの安定性と稼働性を高めるためには、以下の対策が効果的です。

  • 冗長化(※3)
  • 負荷分散
  • バックアップと災害復旧対策
  • モニタリングツール

冗長化によりシステム停止リスクを低減し、負荷分散によりレスポンス時間の短縮が可能です。バックアップと災害復旧対策を強化し、モニタリングツールで事前に問題を検知して対応します。適切な対策を行うことで、システムの安定性と稼働性が大幅に向上し、企業の競争力強化に役立ちます。

※3 冗長化(じょうちょうか)とは、システムの一部が壊れても、すぐに別の部分が動くように準備する仕組みです。安定性の向上や継続稼働を可能にするので、企業のセキュリティ的な予防策として導入します。

ITインフラの最適化とコスト削減

ITインフラの最適化とコスト削減は、多くの企業にとって重要な課題の一つです。基盤システムを導入すると、企業の課題に対して効果的な解決が期待できます。

以下のようなインフラの最適化ができます。

  • サーバーやネットワーク環境の統合による運用効率の向上
  • クラウド技術の活用による柔軟なリソース管理
  • 仮想化技術による効率的なハードウェア利用
  • システム全体の可用性と信頼性の向上

コスト削減効果は以下のとおりです。

  • インフラ運用コストの低減
  • 保守・管理の効率化による人件費削減
  • スケーラブルな環境による無駄なコストの抑制
  • 障害対応時間の短縮によるダウンタイムコストの削減

ITインフラの効率化が進むと、コストの大幅な削減ができます。クラウド技術を活用すれば、高額な設備投資が不要です。サーバーやストレージの初期投資を抑えながら、必要に応じて柔軟にリソースを拡張できます。

基幹システムを導入するメリット

基幹システムの導入により、業務プロセスが効率化・標準化され、全体の生産性が向上します。基幹システムを導入するメリットは、以下のとおりです。

  • 業務の効率化と標準化
  • 情報の一元化と判断スピードの向上
  • 経営情報の可視化とリアルタイム化

業務の効率化と標準化

基幹システムの導入により、生産性が向上し、競争力が強化されます。システム導入の効果は以下のとおりです。

データ入力の一元化
二重入力を防ぎ、作業時間を短縮できます。
ワークフローの最適化
承認プロセスが迅速化され、意思決定のスピードが向上します。
業務の可視化
問題点やボトルネックを特定し、対策を行うことで効率化が可能です。
組織全体で情報の共有
コンプライアンスの強化につながります。

基幹システムの導入は、企業の業務プロセス全体を見直し、最適化する絶好の機会です。
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情報の一元化と判断スピードの向上

基幹システムの導入により、企業の業務効率の大幅な改善が期待できます。基幹システムでは、すべての部門のデータが1つのデータベースで管理されます。情報の整合性が向上し、リアルタイムで情報の共有が可能です。

情報の一元化と判断スピードの向上により、部門間の連携が強化されて意思決定がスムーズに進みます。重複作業の削減により、プロセスが効率化されるのもメリットです。データ分析の精度と速度が向上し、在庫管理の最適化や発注の自動化の実現など、顧客サービスの質も向上します。

財務情報もリアルタイムで把握できるので、経営判断の高速化にもつながります。基幹システムの導入で業務プロセスが可視化されると、問題点の特定も容易です。コンプライアンス対応の強化や監査の効率化にも役立つので、企業の健全性の向上にもつながります。

経営情報の可視化とリアルタイム化

基幹システムにより、経営者や管理者は企業の現状をすぐに把握可能です。経営状況を常にチェックできると、以下の情報を必要なときにすぐに確認できます。

  • 経営指標のリアルタイム表示
  • 財務状況の即時確認
  • 在庫・販売データのリアルタイム更新

経営に必要な情報は画面上にまとめて表示されるので、経営判断に必要なデータを素早く入手できます。データ分析や予測機能も強化されてきたため、昔に比べて正確な業績予測が可能になりました。部門間のデータ共有や連携が強化されるので、経営戦略の立案や修正をすぐに行えます。

市場の変化にも素早い対応が可能になり、競争力の向上にもつながります。経営情報の可視化とリアルタイム化は、迅速で的確な意思決定を支える重要な機能です。基幹システムの導入により、経営の効率化と企業価値の向上が期待できます。

基盤システムの導入と管理のポイント

基盤システムの導入と管理には、効果的なシステム運用が欠かせません。基盤システムの導入のポイントや注意点を解説します。

基盤システムの導入方法

基盤システムの導入は、計画的かつ段階的に進めることが重要です。基盤システムの導入方法としては、自社の現状を分析し、必要な機能や要件の明確化から始めましょう。自社に必要な情報の理解で、適切なシステムを選べます。信頼できるベンダー(※4)選びも欠かせません。

ベンダーの実績や提案内容、サポート体制などを比較検討し、自社に最適なパートナーを探してください。システム設計時には将来の拡張性も考慮しましょう。テスト環境を作り、実際の業務に即した動作確認を行います。実装段階では必要に応じてカスタマイズを行い、既存のデータを新システムに移行する計画を立てましょう。

従業員の研修も必要です。新しいシステムの使い方を丁寧に説明し、スムーズな導入を目指しましょう。本番環境の移行後も、システムの監視や最適化の継続が求められます。定期的なメンテナンスやアップデートにより、システムの性能の維持・向上も大切です。基盤システムの導入は、適切な方法で進めると効果的です。

※4 ベンダーとは、ユーザーが求める製品やシステムを販売する企業や事業者のことです。

効果的な運用のポイント

基盤システムを効果的に運用するには、以下のポイントを押さえましょう。システムの性能を最大化し、業務効率を向上させられます。

定期的なシステムの評価と最適化
業務の変化に合わせて設定を見直し、必要に応じて機能を追加・変更することで、常に最適な状態を保てます。
ユーザートレーニングの実施
従業員が正しく操作できるよう、定期的な研修を行ってください。システムを正しく扱えると機能を最大限に活用し、業務の効率化につながります。
セキュリティポリシーの徹底
基盤システムには重要な企業情報が含まれるため、アクセス権限の管理や暗号化などの正しいセキュリティ対策が必要です。システムの監視とログ管理の強化により、問題の早期発見や不正アクセスの防止につながります。
定期的なバックアップと災害復旧計画の整備
データ損失のリスクを未然に防ぐために必要です。システムの応答速度や処理能力を定期的にチェックし、必要に応じて改善することで、ユーザーの満足度が高まります。
ベンダーとの良好な関係維持
システムの更新やトラブル対応など、ベンダーのサポートが必要な場面は多いです。ベンダーとは、普段からコミュニケーションを密に取ることをおすすめします。

変更管理プロセスの確立も重要なポイントです。システムの変更や更新を行う際は、影響範囲を慎重に検討し、計画的な実行が必要です。システムに関するドキュメンテーションの整備と更新、技術スタッフの育成と知識の共有も忘れてはいけません。

導入・運用するときの注意点

基盤システムの導入・運用の際は、現状の業務プロセスを詳しく分析し、最適な方法を選択しましょう。社内の各部門や関係者との綿密な話し合いも必要です。導入・運用するときの注意点は、以下のとおりです。

  • 段階的な導入
  • 運用体制と人材育成
  • セキュリティ対策
  • 拡張性と技術変化への対応
  • 定期的なバックアップ
  • ベンダーとの契約内容の確認
  • 効果の測定と改善
  • ユーザーのトレーニング

導入・運用するときの注意点を守ることで、一連のプロセスを効率的に進められます

基幹システムの導入のポイント

基幹システムの導入や管理を成功させるために、業務プロセスの分析と要件定義をはっきりさせましょう。基幹システムの導入のポイントを解説します。

基幹システムの導入方法

基幹システムの導入は、企業の業務効率化や競争力向上に大きな影響を与えます。現状の業務プロセスを詳しく分析し、課題を洗い出しましょう。現状の問題点を把握すると、システム導入の目的と期待する効果を明確にできます。

必要な機能や要件を決めることで、適切なベンダーを選べます。一般的な基幹システムの導入方法と手順は、以下のとおりです。

  1. 導入計画とスケジュール策定
  2. データ移行計画立案
  3. テスト環境構築と機能確認
  4. ユーザートレーニング実施
  5. 段階的な本番環境への移行

基幹システムの導入後も、定期的な評価と改善が必要です。サポート体制を整えると、スムーズな運用が可能です。基幹システムの導入は簡単ではありませんが、綿密な準備と計画的な実行により、大きな効果が期待できます。自社の状況に合わせて、最適な導入方法を選択しましょう。
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基盤システムと基幹システムの選び方

基盤システムと基幹システムの選択は、企業の成長と効率化に大きな影響を与えます。適切な選択のためには、自社のニーズを整理して優先順位をつけることが必要です。基盤システムと基幹システムの選び方について解説します。

自社のニーズを整理する

自社のニーズの把握により最適なシステムを選択し、効果的な導入が可能です。以下の項目を確認してください。

  • システム環境と課題
  • 業務プロセスの改善点
  • 経営目標
  • 必要機能とカスタマイズ
  • 部門間連携と情報共有
  • 将来の拡張性
  • ユーザーの技術やスキルレベル
  • モバイル対応やクラウド化の必要性

項目を丁寧に分析することで、自社に最適なシステムの選定につながります。ニーズの整理に時間はかかりますが、整理の工程を省略せずに行うことで長期的な成功につながります。

費用対効果を確認する

システム導入を検討する場合、費用に対する効果の確認は、重要な経営判断の一つです。具体的な数値や指標を用いて、投資の妥当性を導入前に評価できます。費用対効果の確認は、ROI(投資収益率)を計算して、システムへの投資がどれだけの利益をもたらすかを把握します。

TCO(総所有コスト)の分析をすると、導入から運用までにかかる総費用を導入前に計算が可能です。費用対効果を知りたい場合は、以下の項目を確認してください。

  • 業務効率の比較
  • コスト削減効果
  • 売上・利益への影響
  • 導入・投資回収期間

他社の導入事例や成功事例を参考にすると、より現実的な効果予測が可能です。長期的な視点も重要で、システムの拡張性や柔軟性も評価しましょう。現行システムとの互換性や統合コスト、ライセンス費用、メンテナンス費用なども忘れずに確認してください。

費用対効果に関わる要素は、総合的な判断が必要です。導入前の確認により、システムの導入が自社にとって、本当に価値があるかどうかを見極められます。

セキュリティとサポート体制を確認する

システムのセキュリティとサポート体制の確認は、導入を成功させるための重要な要素です。データセキュリティの対策の有無と、セキュリティの強度を確認しましょう。アクセス制御や権限管理機能、暗号化技術の採用状況も確認が必要です。

セキュリティやサポート体制を調べる際は、以下のサービスを確認してください。

  • セキュリティ監査や認証
  • セキュリティアップデート
  • 24時間365日のサポート
  • オンサイトサポート

リモートサポートの提供状況やトレーニング、マニュアルの充実度も重要なポイントです。カスタマイズ対応の可能性と柔軟性、ベンダーの信頼性と実績も確認してください。サービスレベルアグリーメント(※5)の内容や、障害時の対応手順と復旧時間の目安も確認が必要です。

データバックアップと、災害復旧計画の確認も忘れずに行いましょう。サービス内容を丁寧に確認することで、安心して利用できるシステムを選択できます。セキュリティとサポート体制の充実したシステムを選び、長期的に安定した運用を可能にしましょう。

※5 サービスレベルアグリーメントとは、サービスの提供事業者と利用者の間で結ばれる、サービス品質水準や保証のことです。Service Level AgreementでSLAと略されます。

まとめ

ERP導入を検討する際は、基盤システムと基幹システムの違いとメリットを理解しましょう。自社のニーズに合わせた適切なシステムを選択するには、費用対効果やセキュリティ、サポート体制を確認する必要があります。

導入前には十分な検討と準備を行い、効果的な運用には継続的な改善が欠かせません。ポイントに注意することで、システムの導入がスムーズに進みます。慎重に検討し、自社に最適なシステムを選んで、業務効率化と経営改善を実現しましょう。